のどとは
のどは、咽頭とも呼ばれ、この部位は食べ物を食道や胃に送り込む消化器としての役割と、口や鼻から呼吸した空気を気管へと導き、肺まで届けるといった呼吸器の役割があるほか、発声に関しても重要な働きをしています。
そのため、これら部位に咳、たん、扁桃や喉の痛み、いがらっぽいなどの症状や違和感があれば、一度ご受診ください。
扁桃腺炎
咽頭は、上から上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つに分類されますが、中咽頭の部位にある扁桃(口蓋扁桃)に炎症が起きている状態を扁桃腺炎(扁桃炎)と呼びます。原因は、ウイルスや細菌といった病原体に口蓋扁桃が感染することで発症することがほとんどです。元来、扁桃腺は、口や鼻から侵入する病原体を防ぐ役割をするものですが、ストレスや疲労、かぜなどによって免疫力が低下するようになると扁桃腺に病原体などが感染して発症するようになります。
主な症状としては、口蓋扁桃の発赤や腫脹(悪化すると膿を伴う)をはじめ、喉への強い痛みとその激痛により食べ物や唾も飲み込めない、発熱、耳の痛み、全身倦怠感、頸部のリンパ節が腫れるということもあります。加えて、小児の場合は、脱水症状が起きやすいということもあります。ちなみに、上記のような急性の扁桃腺炎を急性扁桃炎と呼び、咽頭の違和感、口蓋扁桃の発赤などの扁桃炎の症状が3ヵ月以上続いていると慢性扁桃炎といい、頻繁に急性扁桃炎の症状を繰り返している場合を反復性扁桃炎と呼びます。
治療に関してですが、症状が軽度であれば対症療法として、解熱剤(アセトアミノフェン)や非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などを投与していきます。また、原因菌が特定されている、中等症以上という場合は、抗菌薬を用いていきます。このほか、水分補給や安静に努めることも重要です。さらに、反復性扁桃炎の患者さまの場合は、口蓋扁桃を摘出する手術療法が検討されます。
急性咽頭喉頭炎
一般的には喉風邪とされるもので、風邪症候群のひとつです。鼻水、鼻づまりの症状がある風邪のことを鼻風邪と呼びますが、急性咽頭喉頭炎は喉が赤く腫れている、喉に痛みや違和感がある、食べ物を飲み込むと痛みがあるといった症状のほか、発熱(37~38℃)が現れることもあります。
ご受診される場合は、扁桃腺など喉の状態、咳や痰の有無なども調べます。そして、診察の結果、細菌感染と考えられる場合は抗菌薬を使用することがありますが、抗菌薬やステロイドを噴霧器にかけて、患部に直接浸透させるネブライザー療法を施し、速やかに炎症などを解消させる治療を施すこともあります。
溶連菌感染症
溶連菌(主にA群β溶血性連鎖球菌)と言われる細菌が咽頭の粘膜に感染して発症した病気のことを溶連菌感染症と呼びます。感染経路としては飛沫感染が挙げられます。主に小児に罹患しやすいのが特徴で、なかでも小学校低学年の世代が発症のピークとされています。
発症初期は、喉が赤く腫れ、痛みが現れ、風邪の症状とよく似ています。また、発熱(38℃以上)が現れることがありますが、熱は出ないこともあります。また、腹痛、吐き気、首のリンパ節の腫れや痛みが見受けられることがあります。これらの症状が起きた後、かゆみも軽く現れ、細かくて赤い発疹が全身や舌(イチゴ舌)に発生することも人によってあります。
基本な治療としては、ペニシリン系の抗生物質の内服です。飲み始めて2日目までには症状が軽減していきますが、細菌がまだ残っていることもあるので、医師が止めるというまでは飲み続けてください。ちなみに、薬を飲み終えた後、1週間程度の間隔を空けて尿検査をすることがあります。それは、溶連菌感染症によって引き起こされる可能性がある急性糸球体腎炎などの合併症の有無を調べるためです。
伝染性単核球症(EBウィルス感染症)
EBウイルス(ヘルペスウイルスの一種)によって起きる病気で、ほとんどの方は幼少期において感染するとされています。ただし、感染したとしても無症状、もしくは発症しても軽度です。
同ウイルスに思春期を過ぎてから初めて感染したという場合に発熱、咽頭炎、リンパ節(特に後頚部)の腫れ、または、肝脾腫や発疹などの症状が現れると伝染性単核球症の発症が考えられ、症状としては急性扁桃腺炎とよく似ています。
治療としては、ウイルス感染によるものなので、特効薬というものはありません。基本的には安静にし、症状が強く出ている場合は、解熱鎮痛薬などを用いることがあります。ほとんどの患者さまは、自然と数週間程度で治癒するようになります。
急性喉頭炎
これは急性の咽頭炎のことで、すなわち喉の炎症です。いわば、喉風邪によって炎症が引き起こされることもありますが、このような細菌やウイルスだけでなく、喫煙や飲酒など刺激の強いものを吸う、飲むといったほか、声の出し過ぎが炎症の原因となることもあります。
急性咽頭炎によって、咳が出る、喉が痛む、腫れる、発熱、声嗄れなどの症状が見受けられるようになります。当院では、これらの症状を和らげる治療も施していますので、お気軽にご受診ください。
声帯ポリープ
喉頭には発声の際に必要とされる声帯があるのですが、声帯膜様部と言われる部分にポリープ(腫瘤)ができている状態を声帯ポリープと呼びます。発症の原因としては、上気道感染などを契機とした炎症、無理な発声を繰り返すなどの声の酷使、喫煙などが挙げられます。これらによって、声帯の細小血管から出血するなどして、血腫が形成され、これを繰り返すうちにポリープが発生するようになるとされています。片側で単発に発生することがほとんどですが、両側で発生することもあります。
主な症状としては、喉の違和感、嗄声、高い声や大声を出すことが難しく、喉の乾燥状態を感じることもあります。
診断をつける場合、間接喉頭鏡、喉頭ファイバースコープなどを使用して、声帯を観察することで発生の有無を確認します。その結果、発症して間もない場合は、大声を出さないや声を酷使しないなど安静に努め、ステロイド薬の吸入や内服などの薬物療法を用いることがあります。保存療法としては改善する見込みがない、もしくはポリープ切除による外科的治療が必要という際は手術療法となります。
手術療法としては、全身麻酔下の顕微鏡下喉頭微細手術によるポリープ切除または、局所麻酔下で喉頭を喉頭ファイバーで観察しつつ、ポリープを切除する喉頭内視鏡下手術が施されます。
扁桃肥大、アデノイド肥大
扁桃腺やアデノイド(咽頭扁桃:のどちんこの後上方、上咽頭にある)が何こしらの原因によって肥大化し、それによって喉の気道や鼻や狭窄している状態です。これによって、鼻がつまる、口呼吸になる、いびきが出る、睡眠が妨げられる、鼻声になる、耳が詰まる感じ、難聴などの症状が起きるようになります。また、症状が進行すると慢性副鼻腔炎、滲出性中耳炎、睡眠時無呼吸症候群を併発することもあります。ちなみに、扁桃やアデノイドの肥大化は5~6歳がピークで、それ以降は小さくなっていきます。
診断をつける場合、経鼻内視鏡やレントゲン撮影、CTといった画像検査を実施します。また、医師が必要と判断すれば、睡眠時無呼吸症候群の有無などを調べることもあります。
治療としては、症状が軽度、もしくは乳幼児ということであれば、経過観察や抗菌薬、点鼻ステロイドなどの薬物療法による保存療法となります。そして、症状が重症で、保存療法では改善しないという場合は、肥大した扁桃やアデノイドを切除する手術療法となります。